2010年4月16日金曜日

雑誌とそのウェブサイトに関する調査(米国)

「カレントアウェアネス-E No.169 E1037」
( 国立国会図書館、 2010.04.14)から                    

米国コロンビア大学が刊行しているColumbia Journalism Review誌は,「印刷版の雑誌のオンラインでの実践」をテーマにした,米国で最初の包括的な調査を実施し,2010年3月にその結果報告書『雑誌とそのウェブサイト(Magazines and Their Web Sites)』を発表した。

調査は,雑誌やデジタルメディア界の関係者からなる諮問委員会の監修の下,新旧メディアの専門家に対するインタビュー調査と一般向け雑誌3,000誌を対象にした質問紙調査という方法で実施された。

質問紙調査には665誌が回答した。

主な結果として,下記のようなことが明らかになった。
 
 <スタッフと意思決定>

 ・雑誌のウェブサイトは,独立したウェブ編集者がコンテンツと予算に決定権を持っている場合の方が収益を生みやすいという調査結果が出ている一方,実際にウェブサイトの決定権を握っているのは印刷版の編集者の場合が多い。

 ・ウェブサイトは,もともと印刷版のスタッフであった人たちによって運営されている場合が多い。

 ・ウェブサイトに従事しているスタッフのうち,ウェブに関連する業務の経験がある者は26%に過ぎない。
 
 <基準と実践>

 ・多くの雑誌で,ウェブサイトの校正と事実チェックが印刷版よりも甘い。

 ・上記の傾向は,ウェブサイトのビジター数が増大するにつれ,また,ウェブサイトの決定権が独立したウェブ編集者にある場合に強くなる。

 ・多くのウェブサイトが,特に断ることなく,コンテンツの誤りを修正している。また誤りを修正しても,その旨を断らない場合が多い。
 
 <ビジネスモデル>

 ・収益を上げている雑誌のウェブサイトは3分の1に過ぎない。

 ・52%が,印刷版の主要なコンテンツの全てをウェブサイトで無料提供していると回答した。

 ・収益を上げているウェブサイトの方が,印刷版のコンテンツ全ての無料提供に積極的である。

 ・3分の2以上が,広告がもっとも大きな収入源だと回答しており,その割合は利益を出しているウェブサイトでは83%にのぼる。
 
 <ソーシャルメディアとコミュニティ形成>

 ・多くのウェブサイトがソーシャルメディアツール(ブログ,SNS,Twitter等)を採用している。

 ・73%が,読者からのコメント機能を導入している。

 ・ソーシャルメディアに関する編集基準は定まっておらず,たとえばブログでは編集や事実チェックが行われることがまれである。
 
 <テクノロジー>

 ・47%がウェブサイトのコンテンツの決定のためにトラフィック統計を利用していると回答しており,定期的に統計を利用しているウェブサイトほど,利益を上げる可能性が高い。

 ・多くの雑誌が,モバイル機器に対応しきれていない。スマートフォンでコンテンツを読めるようにしているとの回答は18%で,電子書籍リーダーに対応しているのはわずか4%である。
 
 <ミッション>

 ・印刷版とウェブサイト版で共通のミッションを共有しているという回答が,両者のミッションは異なるという回答を上回った。

 ・16%が,ウェブサイトのミッションは,読者のコミュニティ形成を含むと回答した。

 ・新たなコンテンツを作ることがウェブサイトのミッションとして必須であるという回答は5%で,大多数は印刷版の雑誌のコンテンツをオンラインで利用している。
 
報告書は,上記の論点を踏まえ,雑誌に関わるステークホルダー間で議論を継続していくことを推奨し,「雑誌スタッフをウェブに関連する業務経験から遠ざけているものは何か,またそれはなぜか」「オンラインでの事実チェック,編集,誤りの修正に関する行動規約やガイドラインを,業界はなぜ作らないのか」,広告との境界が不鮮明なコンテンツに対して,どのような予防対策が立てられるべきか」といったことを検討課題として挙げている。

 Ref:
 http://cjrarchive.org/img/posts/CJR_Mag_Web_Report.pdf
 http://onlinejournalismblog.com/2010/03/06/summary-of-magazines-and-their-websites-columbia-journalism-review-study-by-victor-navasky-and-evan-lerner/

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