2010年7月1日木曜日

ネット時代にメディアはどう生き残るか













ワシントン・ポスト副社長 レナード・ダウニー
Resource: The Post's Top Editor to Step Down
Downie Has Led Paper Since 1991
By Howard Kurtz
Washington Post Staff Writer
Tuesday, June 24, 2008; Page A01


本日、NHK BShiの「プレミアム8 【人物】 未来への提言」で、「ワシントン・ポスト副社長 レナード・ダウニー ~ネット時代に報道はどう生き残るか~ 」が放映された。

以下は、NHKの予告記事から。

「かつてウォーターゲート事件で、卓越した調査報道によりニクソン政権を退陣に追い込むなど、米ジャーナリズムを牽引してきた、ワシントン・ポスト紙の副社長でジャーナリストのレナード・ダウニー氏(67歳)。
1991年から17年にわたって編集主幹を務め、その間ポスト紙は25回もピュリツァー賞を受賞。
輝かしい業績を打ち立ててきた。
いま米国では、新聞やテレビ報道といった既存のジャーナリズムは、読者や視聴者、広告収入をインターネットに奪われ、経営難に陥るケースが相次いでいる。
ダウニー氏は、ウェブ・メディアが勃興するいま、ネットで記事を無料配信する決断を下した。
岐路に立つ報道の現状を調査し、ジャーナリズムの新たなビジネスモデルの構築を積極的に提言している。
番組では、これまで民主主義を支えてきたジャーナリズムが、ネット時代にどこに向かうのか、ダウニー氏にその行方と可能性を聞く。
インタビュアーは映画監督で作家の森達也氏。」

今回報道の起点となった論文は、以下のとおり。

The Reconstruction of American Journalism A report by Leonard Downie, Jr., and Michael Schudson

October 19, 2009 01:00 PM
© Copyright 2009 Columbia Journalism Review. Design: Point Five, NY

上記サイトは、ニューヨークのコロンビア大学の「コロンビア・ジャーナリズム評論」の専門サイトだ。

ダウニーは、アメリカのジャーナリストとして多くの事件現場から調査報道を立ち上げた編集者だ。

彼は、早くからウェブの可能性に着目してきた。

調査報道Investigative journalismとは、記者クラブなどの既存の「発表報道」にたよらず、取材側が主体性と継続性を持って独自に証拠を積み上げていくことで真相を突き止めていこうという立場のことだ。

日本も田中角栄総理を辞任に追い込んだ『文藝春秋』の立花隆の「田中角栄研究-その金脈と人脈」が有名だ。

ウォーターゲート事件報道など多くの調査報道で、地方紙「ワシントンポスト」をアメリカのオピニオンリーダーに育て上げてきたダウニーにとって、ウェブによる減紙や、広告収入の激減は、系列企業にテレビ局を持つワシントンポストの経営の根幹を揺るがす新しい現実であった。

しかし、ダウニーは、あくまでその視点を市民の側に置き、コロンビア大学教授のマイケル・シャドセンと『アメリカ・ジャーナリズムの再建』という論文を、2009年10月に発表、ウェブでも公開し、大きな反響を呼んだ。

彼の指摘したジャーナリズムの未来の可能性は、以下のとおり。

NPO

・大学

ブロガー

上記の、新規の組織が、専門性を持った調査報道を展開していくことで、既存メディアがその情報を購入し、販売していくモデルである。

とくに大学におけるジャーナリスト専門講座から、学生を取材記者としてTV番組を制作し、地方メディアで発表させるアイデアは、秀逸だ。

ビデオクリップは、そのままウェブでも公開される。

また、地方メディア存続のため、連邦政府が第三者の基金を新設し、そこから全国的な資金分配システムを行なうという提言も注目される。

市場分配のシステムそのものが世界的に転換点に立っている現在、ダウニーの提言は、先見性である。

とくに地域情報と地方自治の市民による監視のための、市民による調査報道の可能性も強調されている。

ダウニーは、2010年に、IRE, Investigative Reporters and Editors 「調査報道記者と編集者」を立ち上げ、ウェブでも活動を開始している。

IREのラスベガス会合は、世界から3,500人を超えるジャーナリストが結集した。

まさに、新しいジャーナリスト・ネットワークが出現したのだ。

ProPublica プロプブリカ は、ニューヨークタイムズ記者などニューヨークの取材記者の新しいネットワークで、2010年に設立された。

いずれも、日本の「与えられた情報の垂れ流し」のような発表報道オンリーのメディアの閉塞状況とは、大きな相違がある。

ダウニーは、「私たちが想像できない世界が、いま始まっている」と語る。

asacocoなど、日本の地域メディアも、同様に未来における可能性が試されている。


【by Noah】

2 件のコメント:

  1. asacocoの可能性について、もっと語られていくことが必要ですね。クロスメディアという新しい社会実験ができるのではないでしょうか?

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  2. クロスメディア
    【英】Crossmedia

    クロスメディアとは、ある情報について、文字や音、あるいは手紙や電子文書などの、様々な表現媒体(メディア)を用いて表現することである。

    多様なメディアを用いて表現することは一般にマルチメディアと呼ばれる。クロスメディアは、多様な表現媒体を駆使して一層効果的な伝達を行うという積極的な意味が含まれているという点において、マルチメディアとは区別される。そのためしばしば「マルチメディアが加算的なら、クロスメディアは乗算的である」と言われる。

    ある単一の情報であっても、複数のメディアによって伝達することで、それぞれのメディアが持つ長所と短所が相互に補い合って相乗的な効果を期待することが可能である。例えば広告を配信する場合、街頭で手に取りやすい紙媒体で用意しておき、その紙広告にWebサイトへのアドレスやQRコードを記載しておけば、興味を持った人がインターネットから簡単にアクセスできる。紙媒体からインターネットへ繋がるクロスメディア構造を用意しておくことで、紙媒体だけでは表現しきれない即時性や情報の広がりをもった情報が伝達可能となる。

    クロスメディアは、情報の表現形式、とりわけマーケティング戦略上有効な表現形式として評価され始めている。

    http://www.sophia-it.com/content/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2

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